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欧米諸国は公共政策の強化によって、女性の採用、昇進、賃金に関して、差別を削減することに成功している。 わが国にも法律はあるが、罰則規程がないことも手伝って、さほど差別の解消に役立っていない。
罰則の強化、公共政策の導入、労使の積極的な取り組みが期待される。 女性労働者の賃金が低いことについては、例えば勤続年数が短いので年功制の下では不利であることが指摘できる。
パート労働者が多いために労働時間が短いこともある。 結婚や子育てによる中途退職が結構多いので、企業も失うものがありうることから、昇進や賃金において女性の処遇に及び腰になるという側面はある。
これらの要因は明白な差別とはいえない。 しかし大半は昇進や昇級、あるいは採用における差別によって女性の賃金が低くなるのである。
公共政策を徹底させて、差別の縮小・撤廃を図ることが望まれる。 具体的には、違反企業には厳罰を課するとともに、差別の有無を監視する制度も必要である。

あるいは過渡的政策として、ゆるい割当制度の導入もあってよい。 以上をまとめれば、変化の特徴は農業職とサービス職業者の漸増である。
これらの変化が賃金所得の分配に与える影響力はわが国の場合それほど大きくない。 その最大の理由は、戦前はともかく、戦後のわが国では職業間の賃金格差が大きくないことにある。
欧米諸国では身分階級社会といわれることもあるように、ホワイト・カラーとバブル・カラーの賃金格差は相当大きい。 しかしわが国では同じ企業に勤務する人の間では、職種間の賃金格差は小さいのである。
それを具体的に示してみよう。 わが国製造業のボーナス抜きの平均月収を比較すると、一九九六年の数字でバブル・カラーが三二・四万円、ホワイト・カラーが四○・九万円である。
比率に直すと約一・二三倍である。 ちなみに、アメリカやイギリスではこの数字は二〜三倍になる。
明らかにわが国は職種による賃金格差が小さいのである。 この事実はわが国が平等社会と評価できる根拠の一つになりうる。
旧社会主義国では、イデオロギーの見地からと、肉体的にきつい労働に報いるために、肉体労働者の賃金が単純事務労働者のそれよりも高かった。 わが国の賃金分配も、職種に関してだけいえば旧社会主義国に多少似たような性格を持っていたのである。
すなわち、バブル・カラー労働者の賃金を低く抑えることはなかったので、社会主義的政策の精神をある程度受け入れていた、とも解釈できるのである。 職種間の賃金格差の小さいことは、たとえ就業者の職業構成に変化があったとしても、賃金所得分配に与える効果がほとんどないことを意味する。
すなわち、ホワイト・カラー労働者やサービス業のウェイトが高くなったとしても、賃金分配を極端に平等化も不平等化もしないのである。 むしろこれより重要なことは、一般に所得の低い農業従事者のシェアーが急低下したことが、所得分配の平等化に相当寄与したことである。

農業従業者の減少は、一億総中流化に寄与したのである。 わが国の賃金格差を論じる時に最も関心を呼ぶのは企業規模間格差である。
大企業と中小企業では賃金のみならず、資本装備率、生産性、労働条件等、様々な分野で格差のあることを「二重構造論」というが、賃金格差もこの説の下に論じられてきた。 企業規模間格差がどの程度の重みをもっているかを知る必要がある。
これによると年齢間格差が最も大きいが、次に重要な要因は企業規模間格差である。 大企業(従業員一○○○人以上)の賃金は小企業(一○人から一○○人)のそれよりも一・五倍高いのである。
しかも過去二十数年、規模間格差は総じていえば拡大の傾向にある。 日本の労働者の賃金は、大企業に働いている人と中小企業に働いている人の格差が大きく、しかもそれが拡大しているということである。
日本人の多くが大企業に勤務することを希望する理由の一つがここにある。 図大企業と中小企業の賃金格差を大まかにふたものであるが、もう少し細かくみてみよう。

示された純粋の規模間格差とは、名目支払い額の賃金格差ではなく、その企業に勤務する労働者の特性や産業の質をコントロールした上での賃金格差である。 なぜコントロールする必要があるかといえば、大企業には年功制度によって高い賃金を受ける中高年層や学歴の高い人の割合が大きく、あるいは産業集中度の高い産業(典型的には金融業や電力・ガス業)に属している場合が多いので、それら賃金を高める要因を除去して純粋な規模効果、あるいは企業支払い能力を抽出する必要があるからである。
二つの区分ではなく、五○○○人以上という巨大企業や一○〜二九人という極小企業も含んだ七種の細かい区分データであることに注目してほしい。 この表によってわかる点は次の通りである。
第一に、労働者や企業の質をコントロールすることによって、企業規模間の純粋の賃金格差はやや減少する段階があることがわかる。 大企業と中小企業の間の賃金格差のある部分は、労働者や企業の質の相違に依存するということを意味している。
最後に、労働者の数が規模別にどう分布しているか、ウェイトという視点から規模の効果をみてみよう。 雇用者がどの規模の企業で働いているかを、人数の変化からみてその変遷を示したものである。
すべての企業規模において雇用者の数が増加しているが、特に三○〜四九九人の中堅規模企業の雇用増加が著しい。 すなわち、小規模企業と大規模企業で勤務する人の増加率は一定しているが、中規模企業で働く人の数が相当伸びているので、平均すると労働者の分布には大きな変化のないことを意味している。
従って、労働者の数の変化からみれば中立の効果しかないので、企業規模間賃金の拡大は、労働者の数が変化したというよりも、賃金そのものの絶対格差の拡大のみに帰せられるのである。 学歴間格差のないことと年功制は平等主義の証拠である。
示された結果のうち、最も興味深い点は学歴間賃金格差が非常に小さいことである。 大卒と高卒の平均賃金格差は一九六○年代の一・四倍から現在の一・二五倍くらいまで低下している。
学歴間賃金格差減少の一つの理由は、多くの人が大学に進学するようになった高学歴化が影響している。 すなわち、高学歴者の供給が急増したので、高学歴の稀少価値が減少したのである。
これに加えて、わが国では高い学歴をもっている人に高い賃金を支払うことに、さほどコンセンサスがないのである。 経済学では、学歴の高い人は学校教育や企業内訓練などによって人的資本を多く蓄積するので、高い生産性を企業で発揮すると考えるが、わが国ではそれが成立していないのかもしれない。

あるいは、教育の高い人は高い生産性をもっているが、報酬決定においてその通り報われていないかもしれない。 私は後者の考え方を支持する。
二つの理由がある。 第一に、わが国では年齢や勤続年数が賃金決定に影響力を強くもっていたので、学歴の効果は相対的に弱くならざるをえなかった。
第二に、学歴による賃金格差を大きくすることを意図的に避けてきた。 それは戦後民主化による平等主義の一つの現れとも理解できる。

西欧諸国では学歴の高い人は相当高い賃金を得ており、わが国とは対照的である。


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